LNG供給事業に必要な許認可
液化天然ガスの供給・販売事業
LNG供給事業の許認可の全体像
LNG(液化天然ガス)の供給・販売は、ガス事業法と高圧ガス保安法という二つの法律が同時にかかる点が他のエネルギー事業と大きく異なります。都市ガス導管を通じて一般家庭・事業者に小売する場合はガス小売事業者登録が、LNGをタンクで貯蔵・気化させる設備を自前で持つ場合は高圧ガス製造許可が、それぞれ別系統の許認可として必要になります。どちらか一方ではなく、事業形態によって両方を取得するケースが多いことを最初に押さえてください。
取得すべき順序と依存関係
おおまかな順序は次の通りです。
- まず事業形態を決める。継続的に小売・卸を行うなら法人設立登記をして法人格を持つのが実務上ほぼ必須です。個人で小規模に始める場合でも個人事業の開業届は税務署へ提出します。
- 次に供給設備(サテライト基地・LNGタンク・気化器など)の計画を固め、高圧ガス製造許可を都道府県に申請する。LNGは超低温の液化ガスで、気化時に高圧ガスを扱うため、設備の設計段階から保安基準を満たす必要があります。設備が固まらないと許可申請ができないため、ここが最も時間のかかる工程です。
- 設備の保安体制に関連して防火管理者を選任します。一定規模以上の貯蔵・取扱施設には防火管理者の選任と消防への届出が求められます。
- 供給スキーム(小売か卸か、託送供給を使うか)が固まった段階で、ガス小売事業者登録を経済産業大臣あてに申請します。需要家への小売を行わず卸のみであれば登録が不要な場合もあるため、自社のビジネスモデルが「小売」に当たるかを早期に確認してください。
費用の目安と内訳
許認可そのものの公的手数料は数万円規模ですが、本事業のコストの大半は設備と保安体制にあります。高圧ガス製造許可では、設備の保安検査・完成検査の費用、保安統括者・保安技術管理者など有資格者の確保(人件費)が継続的にかかります。法人設立登記は登録免許税など実費で十数万円〜。ガス小売事業者登録は登録自体の手数料は低額でも、需給管理体制や保安業務の委託体制の構築に費用がかかります。総額は設備規模によって大きく変動するため、設備計画と並行して資金計画を立ててください。
見落としやすい届出とつまずき
- ガス小売事業者登録は「登録」ですが、登録後も需要家保護のための契約説明義務や保安責任が継続します。登録さえ通れば終わりではありません。
- 高圧ガス製造許可は許可後に完成検査・定期の保安検査が必須で、有資格者を欠くと事業継続ができません。資格者の採用を後回しにして設備だけ先行させるのが典型的なつまずきです。
- 防火管理者や消防法上の貯蔵届出を、ガス事業法・高圧ガス保安法の手続きと別物として失念しやすい点に注意してください。
- 託送供給(既存導管の利用)を前提にする場合、導管事業者との協議に時間がかかり、登録のタイミングとずれることがあります。
スケジュール感
設備を伴うLNG供給は、計画から営業開始まで年単位で見るのが現実的です。高圧ガス製造許可と設備の完成検査が律速になるため、法人設立・資金調達を先行させ、設備設計と並行して保安体制(有資格者)を整え、最後にガス小売事業者登録を仕上げる流れで逆算してください。具体的な基準・申請先は所管する都道府県および経済産業局により運用が異なるため、早い段階で所管庁へ事前相談することを強く勧めます。