アグリテック事業に必要な許認可
IT技術を活用した農業支援
アグリテック事業の許認可の全体像
アグリテック事業は「ITで農業を支援する」という一言で括られますが、提供するサービスの中身によって必要な手続きが大きく分かれます。センサーやIoT、営農管理アプリのようなソフトウェア提供だけなら特別な業法上の許可は不要で、開業届や法人登記といった一般的な手続きで足ります。一方で、ドローンによる農薬散布や生育センシングなど「機体を飛ばして対価を得る」領域に踏み込むと、航空法に基づく許認可が一気に重くなります。まず自社サービスがどちらに寄るかを切り分けることが出発点です。
取得すべき順序と依存関係
最初に着手するのは事業形態の確定です。個人で小さく始めるなら税務署へ個人事業の開業届を出します。資金調達・取引先審査・補助金採択を見据えるなら法人設立登記を先に済ませた方が、その後の各種届出の名義が一貫します。
次にドローンを業務利用する場合の航空法対応です。住宅密集地上空や目視外などリスクの高い飛行(レベル4等)を商用で行うなら、無人航空機型式認証を受けた機体を用い、機体認証・操縦ライセンスを揃える流れになります。型式認証はメーカー側が取得しているケースが多いため、購入予定機が認証済みかを先に確認すると無駄が減ります。さらに、航空機(有人機・場合によっては無人機を含む請負飛行)を反復継続して対価を得る形態では、国土交通大臣の航空機使用事業許可が論点になります。自社の飛行形態が許可対象かは飛行方法・機体区分により判断が分かれるため、地方航空局に事前相談するのが確実です。
これらと並行して、農林水産省の農業支援サービス事業届出を行うと、スマート農業の担い手として事業者一覧に掲載され、農家からの認知や連携につながります。新規性の高い事業展開を補助金とセットで進めたい場合は、農山漁村発イノベーション計画認定を都道府県経由で申請します。認定には事業計画の具体性が問われるため、サービス内容が固まってから着手します。
費用の目安と内訳
法人設立は登録免許税だけで株式会社15万円前後、合同会社6万円、加えて定款認証や専門家報酬で総額20〜30万円程度。個人事業の開業届は無料です。ドローン関連は機体認証・操縦ライセンス取得や講習で十数万〜数十万円、対象機体価格は別途かかります。航空機使用事業の許可申請自体の手数料は大きくありませんが、運航体制・安全基準の整備に時間とコストがかかります。届出・計画認定系は手数料は低額ですが、書類作成の工数を見込んでください。
見落としやすい点とつまずき
農薬散布を伴う場合、航空法とは別に農薬取締法・各都道府県の散布ルールや、散布員の知識(産業用無人機オペレーター技能)が問われます。航空機使用事業許可と無人航空機の制度を混同し、自社の飛行形態に必要な手続きを取り違える例が目立ちます。要否や区分は所管庁・自治体により異なるため、機体購入や受注の前に地方航空局と農政担当へ相談し、開業まで2〜4か月の準備期間を見込むのが現実的です。