カーディーラー(新車販売)に必要な許認可
新車の販売
新車ディーラー開業で必要になる許認可の全体像
新車を販売する行為そのものに、独立した「販売免許」はありません。実態としての出発点は、メーカーまたはインポーターとの特約店(ディーラー)契約です。許認可の大半は、新車販売に付随して併設する整備工場・車検対応・下取り業務に対して発生します。つまり「車を売る」ためではなく、「売った車を登録・整備・点検し、下取り車を扱う」ために必要になる、と理解するのが正確です。
事業形態としては、法人設立登記でディーラー会社を立ち上げるのが一般的です。小規模なサブディーラー(特約店から仕入れて販売する形態)であれば個人事業の開業届で始めるケースもあります。
取得すべき順序と依存関係
最初に事業形態を確定します。法人なら法人設立登記、個人なら開業届を税務署へ提出します。これが他のすべての許認可申請の前提になります。
次に、未登録の新車を自社で移動させるための回送運行許可(いわゆるディーラーナンバー)を運輸支局へ申請します。納車前の車両やイベント出展車を公道で動かすため、ディーラーには事実上必須です。一定の販売・取扱台数や保管場所の要件があり、審査に時間がかかるため早めに着手します。
整備工場を併設するなら、自動車整備事業認証(認証工場)を取得します。さらに自社で車検(継続検査)まで完結させたい場合は、認証工場の実績を積んだ上で指定自動車整備事業指定(指定工場・民間車検場)へ進みます。指定は認証を前提とする上位の許可で、検査主任者の選任や検査機器の整備が条件になるため、開業初期は認証から始め、指定は後から段階的に取る流れが現実的です。
下取り・中古車買取を行うなら古物商許可を都道府県公安委員会へ申請します。新車専業でも下取りは避けられないため、ほぼ必要になります。
自動車検査登録(新規登録・名義変更)は、本来は運輸支局での手続きですが、ディーラーは封印受託(丁種封印)の認定やOSS(自動車保有関係手続のワンストップサービス)を活用し、登録業務を内製化または行政書士へ委託します。
なお、タクシーメーター検定は一般の新車ディーラー業務とは直接関係しません。タクシー事業者向けに架装・納車する特殊なケースでのみ関わるもので、通常の開業準備に含める必要はありません。
費用の目安と内訳
法人設立登記は、株式会社で登録免許税15万円前後+定款認証等を含め25万円程度。古物商許可は申請手数料が19,000円です。回送運行許可は申請自体の手数料は数千円規模ですが、保管場所確保や保険加入の実費がかかります。整備事業の認証・指定は、申請手数料より工場設備・検査機器・人員確保のコストが大きく、規模により数百万〜になります。金額は所管庁・自治体により異なるため、運輸支局と公安委員会で最新の手数料を確認してください。
見落としやすい届出とつまずき
- 回送運行許可の手続きの遅れで、納車前車両を動かせず開業がずれるケースが多いです。
- 古物商許可なしに下取り車を転売してしまう違反。新車専業のつもりでも下取りは発生します。
- 認証工場の要件(作業場・点検整備記録簿・整備主任者)を満たさないまま整備を受注してしまう。
- 駐車場法・都市計画法上の用途地域や、消防法(塗装・危険物保管)の確認漏れ。展示場・整備場の立地は早期に行政へ相談すべきです。
スケジュール感としては、法人設立と特約店契約の整備に1〜2か月、回送運行許可と古物商許可で各1〜2か月、整備認証はさらに準備期間が必要です。登録・回送系を先行させ、整備・指定は段階取得とするのが、開業を遅らせない現実的な進め方です。