看護師派遣・紹介に必要な許認可
看護師専門の人材派遣・紹介事業
看護師派遣・紹介で最初に押さえるべき「派遣規制」
この業種を始めるとき、他の人材ビジネスと決定的に違うのが「医療関係業務への労働者派遣は労働者派遣法で原則禁止」という点です。看護師を病院・診療所へ派遣すること自体が、原則としてできません。例外として認められるのは、紹介予定派遣、産前産後・育児・介護休業を取得する職員の代替、へき地の医療機関、そして介護施設や企業の医務室・健診業務など「医療機関以外」での就業に限られます。
そのため、看護師ビジネスの収益の柱は「有料職業紹介(転職あっせん・成功報酬型)」に置き、派遣は介護施設・訪問系・企業ナースなど許される領域に絞る、という設計が現実的です。どちらの事業をやるかで取得すべき許可が変わるので、事業モデルを先に固めることが出発点になります。
必要な許認可の全体像と取得順序
開業に必要なものを依存関係の順に整理します。
- 事業形態の決定(個人事業の開業届 または 法人設立登記)。派遣・紹介とも個人でも法人でも許可は取れますが、資産要件の充足や取引先(医療法人・施設)の信用面で法人が有利です。法人にするなら定款の事業目的に「労働者派遣事業」「有料職業紹介事業」を明記しておく。
- 責任者講習の受講。派遣をやるなら派遣元責任者講習、紹介をやるなら職業紹介責任者講習を、それぞれ申請前に受けておく必要があります。両方やるなら両方受講。
- 資産要件の整備(後述)。決算書または金融機関残高で証明します。
- 労働局を経由して厚生労働大臣へ許可申請。労働者派遣事業許可、有料職業紹介事業許可とも、審査・労働政策審議会の諮問を経るため、申請から許可まで2〜3か月程度を見込みます。
順序として「法人設立 or 開業届 → 講習受講 → 資産整備 → 許可申請」が基本線です。許可が下りる前に派遣・紹介を始めると無許可営業になるため、ここは絶対に前倒しできません。
費用の目安と内訳
法定費用だけでも、両方取得する場合はまとまった額になります。
- 労働者派遣事業許可:登録免許税9万円、収入印紙12万円(事業所が2か所目以降は1か所ごとに+5.5万円)
- 有料職業紹介事業許可:登録免許税9万円、収入印紙5万円(2か所目以降は+1.8万円)
- 法人設立登記:株式会社なら登録免許税15万円+定款認証等で実費合計25万円前後(合同会社はより安い)
- 各責任者講習の受講料、社会保険労務士等に申請代行を依頼する場合の報酬
資産要件は費用というより「保有していることの証明」です。労働者派遣は基準資産額2,000万円以上かつ現預金1,500万円以上、有料職業紹介は基準資産額500万円以上かつ現預金150万円以上(いずれも1事業所あたり)。派遣許可の資産ハードルが特に高く、ここで断念するケースが多いので、自己資金計画は早めに固めてください。
見落としやすい届出・つまずき
- 事業所の物理要件。おおむね20㎡以上の事業所スペースや、求職者のプライバシーが守られる構造(個人情報を扱うため)が審査対象になります。自宅開業だと要件を満たせないことがある。
- 個人情報の適正管理。看護師の経歴・資格情報を扱うため、個人情報適正管理規程の整備が許可要件に含まれます。
- 社会保険・労働保険の適用。派遣社員を雇用する以上、社会保険・雇用保険の加入体制が必要です。
- 「紹介のつもりが派遣に該当」する偽装請負リスク。施設に常駐させて指揮命令を施設が出す形は派遣に当たり、紹介許可だけでは違法になります。契約形態と指揮命令系統を最初に整理しておくこと。
スケジュール感
法人設立・講習受講・資産準備で1〜1.5か月、許可申請から取得まで2〜3か月。あわせて開業まで半年弱を見込むのが安全です。派遣規制の例外範囲の確認と資産要件のクリアが二大関門なので、ここを最初に潰してから集客やナース登録の準備に進むのが、最短で開業にたどり着く順序です。資格や地域要件の細部は所管の労働局によって運用が異なるため、申請前に管轄労働局へ確認することをおすすめします。