看護師派遣に必要な許認可
看護師の人材派遣・紹介
看護師派遣で最初に押さえるべき「医療業務派遣の原則禁止」
看護師派遣の開業で最も重要なのは、労働者派遣法が病院・診療所など医療機関への看護師派遣を原則禁止している点です。例外として認められるのは、紹介予定派遣、産前産後・育児・介護休業の代替要員、へき地の医療機関への派遣、そして社会福祉施設・介護施設・訪問入浴など病院等以外の施設への派遣に限られます。
このため実務上のビジネスモデルは、(1)介護施設・デイサービス等への派遣、(2)看護師の転職を仲介する有料職業紹介、(3)紹介予定派遣、の3本柱になります。どの収益源を主軸にするかで取得すべき許可が変わるため、事業設計の段階で派遣と紹介のどちらを軸にするかを決めることが出発点です。
取得すべき許認可と順序
依存関係を踏まえた順序は次のとおりです。
- まず法人設立登記。後述の資産要件と取引先病院・施設からの信用面から、個人事業より株式会社等での開業が現実的です。個人で始める場合は個人事業の開業届を提出します。
- 次に責任者講習の受講。派遣を行うなら派遣元責任者講習、紹介を行うなら職業紹介責任者講習を、許可申請前に修了しておく必要があります。
- その上で労働者派遣事業許可と有料職業紹介事業許可を、管轄の都道府県労働局を経由して厚生労働大臣へ申請します。両方を扱うなら同時申請が効率的です。
許可は申請から交付まで2〜3か月程度かかるのが一般的で、ここが開業スケジュールの最大のボトルネックになります。
費用の目安と内訳
許可の壁は資産要件です。
- 労働者派遣事業許可:基準資産額2,000万円以上(負債を引いた純資産)、うち現金預金1,500万円以上、事業所面積はおおむね20㎡以上。登録免許税9万円と収入印紙12万円。
- 有料職業紹介事業許可:基準資産額500万円以上、現金預金150万円以上。登録免許税9万円と収入印紙5万円(事業所数により加算)。
両許可を同時取得する場合、登録免許税はそれぞれ必要で、収入印紙の加算は所管の労働局により扱いが異なるため事前確認が必要です。これに法人設立費用(株式会社で実費20〜25万円程度)、講習費用(各1〜2万円)、行政書士に依頼する場合の報酬が加わります。派遣許可の純資産2,000万円は決算書または公認会計士・税理士の中間決算等で証明するため、開業前の資本準備が事実上の参入障壁になります。
見落としやすい届出・つまずき
- 派遣を行うには社会保険・労働保険の適用事業所であることが許可要件です。役員1名のみの法人でも体制整備が問われます。
- 派遣スタッフの社会保険加入、雇用契約、マージン率の公開(派遣法上の義務)を開業時から運用設計しておく必要があります。
- 看護師資格の確認体制。派遣・紹介する看護師の免許証原本確認を怠ると、信用問題に直結します。
- 介護施設への派遣でも、医行為の範囲(喀痰吸引・経管栄養など)が施設の体制で実施可能かは個別に確認が必要で、ここは所管庁・自治体の解釈により異なります。
スケジュール感
資産・資本の準備に最も時間がかかります。法人設立に2週間、責任者講習と申請書類準備に1か月、許可審査に2〜3か月を見込み、開業準備の着手から実際の人材送り出しまで4〜6か月を逆算しておくと安全です。先に営業や登録看護師の確保を進めても、許可が下りるまで派遣・紹介はできない点に注意してください。