技術者派遣に必要な許認可
エンジニアの派遣事業
技術者派遣の許認可の全体像
技術者派遣(エンジニア派遣)は、自社で雇用したエンジニアをクライアント企業に常駐させ、その指揮命令下で業務に従事させる事業です。この「派遣先の指揮命令下で働かせる」点が、業務委託(準委任・請負)との決定的な違いであり、ここに該当する以上は労働者派遣事業許可が必須になります。
2015年の労働者派遣法改正で、かつての「特定派遣(届出制)」は廃止され、現在はすべての労働者派遣が許可制に一本化されています。SES契約という名目でも、実態が派遣であれば許可が必要です。許可なくエンジニアを派遣すると偽装請負・無許可派遣として行政指導や罰則の対象になるため、まずここを正しく押さえることが最優先です。
取得すべき順序と依存関係
順序は事業形態の確定から始まります。
- まず法人で行うか個人事業で行うかを決める。資本金要件の都合上、技術者派遣は法人設立登記を行ってから許可申請に進むのが一般的です。個人事業でも個人事業の開業届を出して始められますが、後述の資産要件を個人資産で満たす必要があります。
- 次に派遣元責任者講習を受講する。許可申請には派遣元責任者の選任が必須で、受講証明書を添付します。
- そのうえで労働者派遣事業許可を厚生労働大臣(窓口は都道府県労働局)に申請する。
人材紹介も併せて行いたい場合は、有料職業紹介事業許可を別途取得します。派遣(自社雇用して送り出す)と紹介(採用を仲介し成約手数料を得る)は別制度・別許可なので、両方やるなら2件の許可が必要です。IT人材派遣特化届出など、扱う領域に応じた追加の届出が求められるケースもあるため、所管の労働局に事前確認してください。
費用の目安と内訳
労働者派遣事業許可の主な費用は、登録免許税9万円、収入印紙代として手数料12万円(事業所が複数なら2か所目以降は1か所につき5.5万円加算)です。これに加え、社会保険労務士や行政書士へ申請代行を依頼する場合は20万〜30万円程度の報酬が別途かかります。有料職業紹介事業許可も併せて取ると、登録免許税9万円・手数料5万円(+1万8千円×事業所数超過分)が上乗せされます。
見落としやすい資産・事業所要件
技術者派遣で最大のハードルは財産的基礎の要件です。1事業所あたり基準資産額2,000万円以上、うち現金預金1,500万円以上が必要で、これを満たせず申請をあきらめる人が多くいます。さらに事業所の面積がおおむね20㎡以上あること、個人情報を適正に管理できる体制があることも求められます。資本金だけでなく、決算後の純資産で判定される点に注意してください。
スケジュール感とよくあるつまずき
申請から許可までは標準で2〜3か月かかります。派遣元責任者講習は定員制で予約が埋まりやすいため、早めに受講予約を入れておくとスケジュールが詰まりません。
つまずきやすいのは次の点です。
- SES契約のつもりが実態は派遣で、無許可状態になっている。
- 資産要件を満たせず申請が通らない。設立直後は資本金を厚めに用意しておく。
- 紹介予定派遣や人材紹介も行うのに、有料職業紹介事業許可を取り忘れている。
資産要件や事業所要件の判断は労働局により運用が分かれることもあるため、申請前に管轄労働局へ相談し、必要書類と基準を確認してから準備を進めるのが確実です。