精密機械製造に必要な許認可
精密機器の製造
精密機械製造の開業で押さえる許認可の全体像
精密機械製造は「製造行為そのものに包括的な営業許可は不要」だが、扱う製品・装置・原材料ごとに個別法の届出が積み重なる点が特徴だ。計測機器を作るなら計量法、圧力容器やガス機器を作るなら労働安全衛生法・ガス事業法、産業用ロボットなら安全認証、海外取引があれば外為法——というように、製品ラインごとに必要な手続きが変わる。まず自社が作るものを棚卸しし、どの法律にかかるかを切り分けることが出発点になる。
着手順序(依存関係)
1. 事業形態の確定。まず個人事業の開業届を税務署へ提出する。出資・取引信用・設備投資の規模が大きいなら法人設立登記を先行させる。許認可の名義はこの事業主体に紐づくため、ここを最初に固める。
2. 拠点・建屋の手続き。工場用地が一定規模(特定工場:敷地9,000㎡以上または建築面積3,000㎡以上が目安)に達する場合、工場立地法届出が操業開始の原則90日前までに必要になる。建屋確定後、収容人員に応じて防火管理者を選任し消防署へ届け出る。
3. 製品ごとの個別法。ここが精密機械製造の本丸。設備が決まり、製造品目が確定してから着手する。
製品別に発生する届出・許可
- 計量器を作る・売る場合:特定計量器製造事業届出(計量法、製造開始前に都道府県へ)、検定や型式承認が絡むなら計量士登録の確保、販売も行うなら計量器販売事業届出。
- 圧力容器・ボイラー:第一種圧力容器など規格に該当すると圧力容器製造届出に加え、製造方法によっては圧力容器製造許可(労働基準監督署経由・都道府県労働局)が要る。設計段階で適用区分を確認する。
- 電気を使う完成品:電気用品安全法の対象なら、輸入部材を扱う電気用品輸入事業届出や製造事業届出。PSEマークの適合確認とセットで考える。
- ガス機器:ガス用品製造事業届出(ガス事業法・液石法)。
- 産業用ロボット・自動化装置:産業用ロボット製造業届出や自動車部品製造業届出といった品目区分の整理に加え、出荷にはロボット製造安全認証(機能安全・リスクアセスメント、輸出ならCE等の適合)が実務上不可欠。3Dプリンター製造業届出など装置区分もここで確認する。
- 化学物質を製造工程で使う場合:特定化学物質使用事業場届出(特化則)。塗装・洗浄・接着工程で該当しやすい。
海外取引がある場合
工作機械・センサー・素材は外為法の規制貨物に該当しやすい。輸出を視野に入れるなら輸出管理内部規程(ICP)届出を整備し、該非判定の社内フローを開業初期から作っておく。後付けは混乱しやすい。
費用とスケジュールの目安
届出系の多くは登録免許税・手数料が数千〜数万円規模で、コストの主役はむしろ計量士確保・安全認証取得・試験検査の外注費だ。所管庁により様式も窓口も異なるため、製品確定から操業まで3〜6か月を見込みたい。工場立地法は90日前ルール、安全認証は審査に数か月かかる点が律速になる。
よくあるつまずき
- 「製造業に営業許可は不要」と思い込み、計量法・電安法・労安法の個別届出を見落とす。
- 工場立地法の90日前届出を建設スケジュールに織り込み忘れ、操業開始が遅れる。
- 圧力容器の「届出」と「許可」の区分を取り違える。
- 量産直前に輸出管理が問題化し、出荷が止まる。
要否や様式は自治体・所管庁により異なるため、製造品目を確定した段階で各窓口に事前相談するのが確実だ。