システムインテグレーション(SIer)に必要な許認可
企業向けシステムの設計・開発・運用
システムインテグレーション開業で必要な許認可の全体像
システム受託開発(SIer)の事業そのものは、原則として特別な営業許可なしで始められます。建設業や飲食業のような「業を営むための免許」は存在せず、開発・設計・運用の請負・準委任契約は無許可で受注可能です。したがって最初のハードルは許認可ではなく、事業形態の選択と契約形態に応じた届出になります。
ただし「どう人を動かすか」「どんなサービスを提供するか」で、後から必須化する許認可が複数あります。SIerでとくに見落とされやすいのが労働者派遣事業許可です。客先常駐でも、指揮命令が客先にある働き方は準委任(SES)ではなく労働者派遣に該当し、無許可なら違法派遣になります。受託・準委任で始めたつもりが実態は派遣だった、という齟齬が監督署対応で表面化します。
取得すべき順序と依存関係
順序は「事業形態の確定 → 開業届/設立登記 → 提供サービスに応じた届出」です。
- 個人で始めるなら個人事業の開業届を税務署へ提出(開業から1か月以内)。法人なら先に法人設立登記を行い、登記完了後に法人としての各種届出へ進みます。
- 客先常駐・人材提供を収益の柱にするなら、受注前に労働者派遣事業許可を取得します。審査に2〜3か月かかるため、ここが全体スケジュールの最長クリティカルパスになります。
- 自社でメッセージング・SaaS型の通信サービスを他者に提供する形態では電気通信事業届出が必要になる場合があります。単なる業務システム納品では不要ですが、不特定多数への通信役務提供に踏み込むと該当します。
認証・届出の位置づけ
サイバーセキュリティサービス届出、マネージドセキュリティサービス届出、情報セキュリティサービス審査登録、RPAサービス提供事業届出、チャットボットサービス事業届出といった項目は、法律上の営業許可ではなく、提供サービスの内容や官公庁・大手案件の入札要件として求められるものです。とくに電子入札システム認定や、特定個人情報保護評価書提出(マイナンバー関連業務を受託する場合)、マイナンバー情報連携事業届出は、案件の発注者要件で初めて必要になります。
プライバシーマーク付与認定とISMS認証(ISMS適合性評価)は任意認証ですが、実務上は取引の入口です。大手・官公庁案件のRFPで「Pマークまたはマネージドセキュリティサービス届出ISMS取得済みであること」が応札条件になることが多く、未取得だと商談が始まりません。マイナンバーを扱うなら特定個人情報保護評価書提出も発注者から求められます。
費用の目安と内訳
- 開業届:無料。法人設立登記:登録免許税15万円(株式会社)+定款認証約5万円、合計20〜25万円程度。
- 労働者派遣事業許可:登録免許税9万円+収入印紙12万円のほか、基準資産2,000万円以上・現預金1,500万円以上の財産要件があり、これが実質的な参入コストです。
- プライバシーマーク:審査料・付与登録料で規模により30万〜60万円程度+2年ごとの更新。ISMSは審査機関費用で初年度数十万〜百万円規模になることもあります。
費用感や要否は所管庁・自治体・審査機関により異なるため、応札予定の発注者要件を先に確認してから取得対象を絞るのが堅実です。
スケジュール感とつまずき
派遣許可(2〜3か月)と認証取得(Pマーク・ISMSで半年前後)が長期工程です。法人化は1〜2週間で完了します。よくあるつまずきは、SESのつもりが実態は派遣で許可なく常駐を始めてしまうケースと、Pマーク未取得のまま官公庁案件に応札して入口で落ちるケースです。先に「どの案件を取りに行くか」を決め、その発注者要件から逆算して許認可・認証を揃える順序設計が、無駄な取得コストを避ける鍵になります。