インターネットプロバイダに必要な許認可
インターネット接続サービスの提供
インターネットプロバイダ開業に必要な許認可の全体像
インターネットプロバイダ(ISP)の事業は電気通信事業法の規制対象であり、開業の核となるのは「電気通信事業届出」または「電気通信事業登録」です。どちらに該当するかは、自社で保有する伝送路設備の規模で決まります。
自社で大規模な伝送路設備を持たず、他社回線(光コラボなど)を借りて接続サービスを提供する、あるいは設備が一つの市町村の区域内に収まる小〜中規模のISPであれば「電気通信事業届出」で足ります。これに対し、複数都道府県にまたがる端末系・中継系伝送路設備を自ら設置する大規模ISPは「電気通信事業登録(大規模ISP登録)」が必要になります。多くの新規参入ISPは、まず届出からのスタートになります。
届出・登録ともに総務省(管轄の総合通信局)が窓口で、登録免許税や手数料は原則かかりません。ここが他の許認可と大きく違う点です。
取得すべき順序と依存関係
順序の基本は「事業主体の確立 → 電気通信事業の届出/登録 → 付随設備・サービスの届出」です。
- まず法人で行うなら法人設立登記、個人なら個人事業の開業届を済ませ、事業主体を確定させる
- 次に提供サービスの内容を固め、電気通信事業届出(インターネットプロバイダ届出)または大規模ISP登録を行う
- 自社で通信ケーブル等を敷設する場合は有線電気通信設備届出を併せて提出する。電柱共架や道路占用が絡むと別途調整が必要
電気通信事業の届出はサービス開始前に行う必要があり、後回しにできません。設備系の届出は、設備の構成が固まった段階で行います。
費用の目安と内訳
届出・登録そのものは無償ですが、実際の開業コストは設備とバックボーン回線が中心です。上位回線(トランジット/ピアリング)契約、ルータ等のネットワーク機器、データセンターのラック費用、自社IPアドレス・AS番号取得(JPNICへの管理手数料)などで、規模により数百万円規模になることもあります。届出書類の作成を行政書士に依頼する場合は数万〜十数万円が目安です。
見落としやすい届出と提供サービス別の追加手続き
ISPは付随サービスを広げると、サービスごとに別の届出・認定が発生します。該当するものだけ行えば十分で、すべてが必須ではありません。
- ホスティングサービス届出、CDNサービス届出、DNSサービス提供事業届出、VPNサービス提供事業届出、クラウドPBXサービス届出 — それぞれのサービスを電気通信役務として提供する場合
- 衛星インターネット接続サービス免許・衛星インターネットサービス免許 — 衛星回線を用いる場合は無線局免許が絡む
- 公衆無線LANを展開するならWi-Fiスポット設置届出
- SSL/TLS証明書発行事業認定、電子署名認証業務認定、特定認証業務認定 — 認証局を兼ねる場合
- ドメイン名登録管理事業者(レジストラ)認定・ドメイン名登録事業者認定 — ドメイン登録代行を行う場合
- インターネット違法有害情報対策届出 — フィルタリング等の対応に関わるもの
このほか、自社で無線設備や工事部門を持つ場合は、端末設備技術基準適合認定、電気通信工事業者登録(通信工事担任者)、各種無線従事者資格(特殊無線技士免許、総合無線通信士免許など)が関係してきます。基地局免許・5Gローカル基地局免許・実験試験局免許などは、自前で無線局を運用する事業者に限られるため、一般的な接続専業ISPには通常不要です。
スケジュール感とよくあるつまずき
事業主体の設立に2〜4週間、サービス設計と上位回線・設備の手配に1〜3か月、電気通信事業届出は受理ベースで進みます。設備調達がボトルネックになりやすいので、届出より先に回線とIPアドレスの確保を動かすのが現実的です。
つまずきやすいのは、(1) 届出か登録かの判断を設備規模で誤る、(2) 個人情報・通信の秘密の保護体制(電気通信事業法上の義務)の整備を後回しにする、(3) 提供サービスを増やした際に追加の届出を出し忘れる、の3点です。電気通信事業者には「通信の秘密の保護」「個人情報保護」「業務改善・事故報告」などの継続義務があるため、開業時点で社内規程と運用体制を整えておくことが、後のトラブル回避につながります。なお、要否や提出先の詳細は総務省・所管の総合通信局により運用が異なる場合があるため、最終判断は管轄窓口に確認してください。