漁業に必要な許認可
海面・内水面での漁獲
漁業の許認可は「人・船・漁場」の三層で揃える
漁業の開業準備は、操業する人の資格(人)、使う船の登録・検査(船)、漁をする権利(漁場)という三つの層を別々に押さえる必要があります。どれか一つでも欠けると出漁できません。まず自分がやるのが海面漁業か内水面漁業か、漁業権に基づく漁業か許可漁業かを切り分けるところから始めます。
取得順序と依存関係
順序は概ね次のとおりです。
- 事業形態を決め、個人事業の開業届(または法人設立登記)を出す
- 漁業協同組合へ加入する(沿岸漁業ではほぼ必須。漁業権の多くは漁協が保有し、組合員でないと行使できない)
- 操船資格を取る(沿岸の小型漁船なら小型船舶操縦免許。20トン以上や遠洋では海技免状)
- 漁船を用意し、漁船登録(漁船法)・船舶検査証書(日本小型船舶検査機構)・船舶登記/登録、必要に応じて船舶局無線免許または漁業用無線局免許を揃える
- 漁業の種類に応じて、漁業権免許か漁業許可を取得する
漁業権は新規に個人が直接もらうものではなく、海区漁業調整委員会の手続きを経て知事が漁協などに免許する仕組みです。定置網なら定置漁業権免許、養殖なら特定区画漁業権免許や区画漁業権が関わり、いずれも実務上は漁協加入が前提になります。一方、底びき網や刺し網など漁船を使う漁業は知事許可・大臣許可の漁業許可が必要で、許可には漁船登録の完了が前提となるため船まわりを先に固めます。河川・湖沼での操業は内水面漁業許可で、地域によっては内水面漁業協同組合への加入や設立認可が論点になります。
費用の目安
- 小型船舶操縦免許:二級でおよそ7〜10万円、一級で10〜15万円(教習・試験込み)
- 漁船:中古小型船で数十万〜数百万円。漁船登録・船舶検査の手数料は数千〜数万円
- 無線局免許:申請手数料に加え機器代がかかる
- 漁協加入:出資金と加入金で数万〜数十万円(地域差が大きい)、別途組合費・漁業権行使料
- 漁船保険:漁船損害等補償法に基づく加入届出と保険料
合計額は漁業の種類と地域で大きく振れます。具体額は所管の都道府県・漁協により異なるため、必ず管轄窓口で確認してください。
見落としやすい届出
漁船保険加入届出、沿岸漁場管理制度に関する届出、海区漁業調整委員会への各種届出は忘れがちです。資源管理面では水産資源保護法許可、水産資源管理計画認定、沿岸漁業改善計画認定が関わる漁業もあります。鵜やトドなど食害対策で捕獲を行う場合は、有害鳥獣捕獲許可や狩猟免許・狩猟者登録が別途必要になることがあります。漁港の岸壁や荷さばき施設を使うなら漁港施設使用許可、組合を新設するなら漁業協同組合設立認可(内水面なら内水面漁業協同組合設立認可)、新造船を造るなら漁船建造許可も検討します。水産試験場利用許可は種苗や試験操業で使う場面があります。
つまずきやすい点とスケジュール
最大のつまずきは「漁業権は買えない・個人に直接下りない」という構造を知らずに船だけ先に買ってしまうことです。沿岸で漁を始めるなら、まず地元漁協に相談して加入の可否と空き枠を確認するのが先決です。免許取得・漁船登録・許可申請はそれぞれ数週間〜数か月かかり、漁協の総会日程や漁期にも左右されます。半年〜1年の準備期間を見込み、人・船・漁場の三層を並行して進めるのが現実的です。