訪問介護事業に必要な許認可
訪問介護サービスの提供
訪問介護事業の許認可全体像
訪問介護事業の開業で最初に押さえるべきは、「介護保険」と「障害福祉」は別制度で、指定もそれぞれ必要だという点です。高齢者向けに介護保険の訪問介護事業所指定を受けても、障害のある方へのヘルプサービスを提供するには、居宅介護(障害者ホームヘルプ)事業所指定を別途取得しなければなりません。重度訪問介護事業所指定、同行援護事業所指定、行動援護事業所指定、さらに市町村の地域生活支援事業である移動支援事業所指定も、対応する利用者層に応じて個別申請が前提です。
夜間対応型訪問介護事業所指定や定期巡回・随時対応型訪問介護看護事業所指定、小規模多機能型居宅介護事業所指定、看護小規模多機能型居宅介護事業所指定は「地域密着型サービス」に分類され、都道府県ではなく市町村が指定権者になります。介護事業所指定や介護予防訪問介護相当サービス事業者指定(総合事業)も窓口・基準が分かれるため、自分が提供するサービス種別ごとに権者を確認してください。
取得すべき順序と依存関係
順序は明確です。介護保険の訪問介護事業所指定は、申請者が法人であることが原則要件のため、個人事業の開業届だけでは指定を受けられません。まず法人設立登記を済ませ、定款の事業目的に介護事業を明記しておく必要があります。
1. 法人設立登記(株式会社・合同会社・NPO等) 2. 事務所の確保(事務室・相談スペース・手指消毒設備など設備基準を満たす物件) 3. 人員の確保(管理者、サービス提供責任者、訪問介護員を常勤換算2.5人以上) 4. 指定申請(申請月の前月までに提出、指定は原則毎月1日付) 5. 指定後に営業開始・介護報酬請求
サービス提供責任者は介護福祉士や実務者研修修了者など、訪問介護員は介護職員初任者研修以上が要件です。人員が揃わないと申請自体が受理されません。
費用の目安と内訳
- 法人設立:合同会社で実費6〜10万円程度、株式会社で20〜25万円程度
- 指定申請手数料:無料〜数万円(自治体・所管庁により異なる)
- 物件・設備:保証金、事務機器、手洗い設備等
- 人件費:指定前から常勤換算2.5人を確保するため、売上ゼロの期間の給与が最大の負担
介護報酬は提供月の2か月後に入金されるため、開業から最初の入金まで運転資金が3か月以上必要になる点を見落とさないでください。
通院送迎を行う場合の追加許認可
利用者の通院送迎を有償で行うなら、介護タクシー事業許可(一般乗用旅客自動車運送事業・福祉限定)が必要です。緑ナンバーを取らずに行う場合は、自家用有償旅客運送登録(福祉有償運送)で対応し、福祉有償運送登録更新も忘れず管理します。民間救急として搬送するなら患者等搬送事業認定(消防)が別途必要です。これらは運輸局・消防が窓口で、介護保険指定とは制度が完全に別系統です。
よくあるつまずき
- 介護保険指定があれば障害福祉も提供できると誤解する(実際は別指定)
- 地域密着型サービスを都道府県に申請してしまう(権者は市町村)
- 指定申請の締切(前月の中旬や月末など自治体差)を逃し、開業が1か月ずれる
- サービス提供責任者の資格要件を満たす人材を確保できず申請が止まる
なお、社会福祉士登録は事業指定の必須要件ではありませんが、有資格者がいると体制加算や信頼性で有利です。子ども食堂届出のような地域貢献活動を併設する場合は、本体の介護事業とは別に各自治体の届出ルールを確認してください。